ミバエ科の標本を整理しているうちに、表題の「シラホシハマダラミバエ」と「タテジマハマダラミバエ」の学名と区別が混乱したので、こちらに整理してみました!
ちなみに、タテジマハマダラミバエだろうな、と思っていたNo.774。翅の模様が複雑ですが、左右でも柄が違うので変異のような気がします。結論として、このNo.774は他方のシラホシハマダラミバエだと結論付けられました。なんてこったい。

まずは、各所に記された学名をざっくり調べてみました。以下各種をシラホシ、タテジマと呼ぶことにします。
| 文献名 | 年代 | シラホシ学名 | タテジマ学名 |
|---|---|---|---|
| 原色昆虫大図鑑 | Acanthonevra trigona | Acanthonevra formosana | |
| 福井県昆虫目録(第2版) | 1998 | Lenitovena trigona | Lenitovena pteropleuralis |
| ハエ目 Diptera (丹沢大山総合調査学術報告書 丹沢大山動植物目録) | 2007 | Acanthonevra trigona | Acanthonevra formosana |
| 愛媛県のミバエ科 | 2010 | Lenitovena trigona | Lenitovena pteropleuralis |
| 松山市産ハチ・ハエ類目録 | 2012 | Lenitovena trigona | Lenitovena pteropleuralis |
| ハエハンドブック | 2024 | Acanthonevra trigona | Acanthonevra formosana |
| iNaturalist | 2024前 | Acanthonevra trigona | Acanthonevra formosana |
| iNaturalist | 2024後 | Acanthonevra trigona | Rioxoptilona formosana |
ざっと、こんなものです。学名があちこち変遷しているのがわかると思います。基本的には両種とも同属扱いですが、iNaturalistは2024年にタテジマをAcanthonevraからRioxoptilonaに変更しています。
ここで浮かんだ疑問として、
ということ。
業界の決定があるのかはわかりませんが、おそらく結論としてはどれも間違いではなく、どの研究を基準とするか、みたいなところだと思います。
以下、Geminiにまとめてもらいました。間違い注意です。
これまでの研究(Ito 1984, Korneyev 1999, 2023等)をまとめると、以下の3段階のステップに整理できます。
ステップ1:広義の Acanthonevra 属時代(〜1980年代前半) かつて、翅に複雑な斑紋を持つハマダラミバエ類の多くは、便宜的にAcanthonevra 属という大きなグループにまとめられていました。シラホシハマダラミバエ(trigona)もこの属に含まれていました。
ステップ2:細分化と Rioxoptilona 属への割り当て(1980年代〜1990年代) 研究が進み、刺毛(毛の配置)や翅脈の微細な構造の違いから、属を細分化する動きが強まりました。 タテジマハマダラミバエ: 翅の模様が Rioxoptilona 属の特徴(放射状の紋など)に似ていたため、Rioxoptilona属として扱われることが多くなりました。 シラホシハマダラミバエ: 伊藤修四郎(1984)により、新しい属Lenitovena属が提唱され、ここに移されました。
ステップ3:現在の Lenitovena 属への再編・確定(1999年〜現在) Korneyev (1999) やその後の再検討により、タテジマハマダラミバエも、形質的に Rioxoptilona よりも Lenitovena に近いことが判明しました。 結果として、かつて Rioxoptilona や Acanthonevra に置かれていた種がLenitovena属に統合・整理されました。 現在、日本産目録等では、両種ともに Lenitovena 属として記載されています。
論文Hancock, David (2011)より抜粋して整理してみました。
まず、LenitovenaとRioxoptilonaの間には下記の識別点があると述べています。
| 28項目の識別点 | Lenitovena | Rioxoptilona |
|---|---|---|
| ①翅r4+5室の透明斑、楯板(scutum)の後方の色 | DM-Cu横脈を越えて2,3の斑紋あり。 | |
| 外側の斑紋は縦長の筋状にならない。 | ||
| 楯板は広く黒色になることはない。 | DM-Cu横脈の上、あるいはそれより外側の領域にある透明斑は、通常 1個のみ。 | |
| もし2個目の斑紋がある場合は、それは縦長の筋状であり、かつ楯板(背中)の後方が広く黒色になる。 | ||
| ②br 室(第1基室)の近くの透明斑紋 | r-m横脈手前に、大きな透明斑がある。 | あったり、なかったり。 |
| ③m室にある透明な切り込み(斑紋) | 大きく幅広で、通常はM脈の半分以上の位置まで広がっている。 | 変異が多く、しばしば小さかったり狭かったりする。 |
| ④オスの前脚の毛 | 腿節と脛節の腹側には、通常、密な剛毛が生える。 | 腹側の剛毛があったり、なかったり。 |